感染症の流行期間あるいは流行後における、
霊芝の理解と活用
何永慶 社長

 

自然医学文摘雑誌社 発行人社長

アメリカ自然医学研究院副会長兼CEO

1998/07/05初稿2021/ 05/24修訂

霊芝は中国医学で用いられる中医薬のひとつで、中国最古の本草書である『神農本草経』から明代に著された本草学の集大成『本草綱目』まで、さまざまな中医薬の書籍に上品(最も高いランク)として記載されています(※訳者後注1)。また国の内外を問わず、現代科学の研究でも高い評価を得ています。霊芝の評価を中国語で十文字にまとめると、無毒、広効、正常、扶正、祓邪となります(※訳者注2)。また量を多く、長期間食用しても、身体に害を与えることがありません。

 

※訳者注2……「広効」は「効果が体の特定の部位に限定されない」、「扶正」は「体の回復力、環境に対する適応能力や病気に対する抵抗力を正気と言い、その正気を補助すること」、「祓邪」は「疾病を引き起こす要因を邪気と言い、その邪気を取り除くこと」という意味です。

 

(一)現代医学から見た霊芝

 

アダプトゲン(adaptogen)

 

1970年代、ソ連科学アカデミー(現ロシア科学アカデミー)のIsrael Brekhman博士は「アダプトゲン」の概念を発表しました。この「アダプトゲン」の概念は世界医師会にも認められています。

 

「アダプトゲン」に該当するための条件は以下の三つです。

 

  1. Non-toxic 無毒かつ副作用がない(nontoxic)。

  2. Broad effect 効果が広範囲に及び、特定の臓器や器官に限定されない(nonspecific)。

  3. Normalizes  全身の各機能を正常化し(normalization)、体内の恒常性を維持させ(homeostasis)、自然治癒力が向上するよう(self-curative power or self-healing ability)、全身を調整する作用を持つ。

 

 霊芝はこの「アダプトゲン」の3つの条件すべてに合致しており、西洋医学の薬が毒性(副作用)によって用量の上限が決まるのとは反対に、用量によって効果がどれほど得られるかが決まります。霊芝の用量とその効果は正比例しており、少量なら小さい効果(日々の保健)、中程度の量なら中規模の効果(人間の自然治癒力をサポートする)、大量の場合は時として非常に大きな効果(命の危機を救う)をもたらします。

(二)中国医学から見た霊芝

  扶正祓邪が同時進行で行われる。

扶正は祓邪に利あり……正気を助ければ、邪気を取り除きやすくなる(正気、邪気は前述)。

祓邪すれば正なり、自ずから安んず……邪気が取り除かれれば、身体は正常な状態となり、自然と健康になる。

   中医薬では薬や食材を上品、中品、下品にランク分けしますが、最高ランクの上品は、上記の「扶正祓邪」の条件を満たす優れた薬と食品のみがカテゴリーに入っています。霊芝もこの上品のランクに位置づけられていて、しかも服用に際し、服用する人の住む地域や暮らしている気候風土、人種や体質、また性別や年齢による制限がまったく無く、極端に言えば動物であれば誰でも食用が可能です。

  目下、全世界は新型コロナウイルス(Covid-19)の蔓延という危機に直面していますが、この新型コロナウイルスは中国医学では「瘟疫」(おんえき。急性の伝染病のこと)の一種として分類しています。中国医学には千年に亘る瘟疫治療の経験があり、台湾三軍総医院では、新型コロナウイルス感染症治療において中医薬を併用することで、肺炎患者の救命に成功しています。これは実に称賛されるべきことです。また中国大陸ではすべての疫病予防で全面的に中医薬が使用されており、その成果は世界中の注目を集めています。

  しかし愚見を述べるならば、中医薬のあらゆる処方に霊芝を加えることで(処方における役割は伍、君、臣、佐、使のいずれでも構いません)、効果を大きく向上させる同時に、処方の効果に偏りがあっても、修正することが可能です。防疫対策期間の霊芝の服用方法ですが、中国医学の専門的な診断方法である「弁証論治」を知らなくても全く問題ありません。霊芝単品、もしくは良質な霊芝の子実体の製剤で十分です。ブランドは問いませんし、霊芝の切片を煮出したものでも構いません。霊芝とプロポリス、霊芝とビタミンCなど、体に良い作用を与え、なおかつ害の無い食べ物や自然療法を、各自の状況に応じて組合せるのも良いでしょう。

  疫病の流行がなおも続く今日、外因性の感染原因を防ぐことも当然必要ですが、しかし最も重要なことは、自分自身の身体が「正気存内(正気が体内に十分備わっており、邪気に対抗する力がある)」の状態であるかどうかです。まず優先するべきは、いかにして自分自身の自然治癒力( Medicatrix ※注1)を高めるかです。霊芝の効用は非常に広い範囲に及ぶため、新型コロナウイルスの予防及び治療効果を高めるだけでなく、免疫力を調節し、非特異的免疫(Nonspecific immunity function ※注2)、特異的免疫(Specific immune Function ※注3)の双方を強化するほか、身体がインターフェロン(Interferon ※注4)を生成したり、ウイルスの増殖を抑えたり、もしくはウイルスを体外に追い出す(祓邪外出)ように促すことができる上、体に対し有害な作用を及ぼすことはありません。

(三)注意事項

霊芝は血行を良くする効果が非常に高いので、外傷により大量に出血している場合や、手術の前後二日間は、食用してはいけません。

(四)霊芝の欠点

(1)健康保険の適用外です。また医療保険の支払い対象ではありません。

(2)霊芝の持つ優れた効果、汎用性は、なかなか信用されません。

(五)どのような人が、霊芝を服用する必要がないか?

(1)もう仙人になった人。

(2)霊芝を理解しない人、分かってない人。

(六)結び

身是菩提樹
心若明鏡台
天天吃靈芝
可免惹塵埃

身は是れ菩提樹
心は明鏡台の如し
天天霊芝を喫し
塵埃を惹(ひ)くを免れるべし

(人は本来は仏であり、心も本来は鏡のように清らかなものである。

 毎日霊芝を食用することで、疾病の原因を取り去り、病の無い清らかな体にするべきである。)

注1:自然治癒力(Self-healing power)

生命を生命たらしめる特性、すなわち自ら生成、複製、更新、調節、治癒、適応する能力のことを指します。この六つの能力はすべての生物(微生物も含む)に備わっています。

注2:非特異的免疫(Nonspecific immunity)

先天性免疫、自然免疫とも呼ばれます。病原性を持つ微生物や異物の侵入に対し、異物を特定することなく防御を行うシステムのことを言います。

この非特異的免疫が身体に一生備わっている免疫であるのに対し、後述の特異的免疫はある決まった過程を経なければ獲得されません。特異的であれ非特異的であれ、いずれの免疫も、侵入した病原体を死滅させるという重要な働きを担っています(免疫応答)。

 

注3:特異的免疫(Specific immune Function)

 獲得免疫とも呼ばれます。一般的には微生物など特定の抗原による刺激を受けた後に形成されます(免疫グロブリンやリンパ球が抗体としての働きを担います)。非特異的免疫とは異なり、特定の抗原のみに対し反応します。何らかの感染症に感染して完治するか、無症状感染となった場合、あるいは予防接種(各種のワクチンやトキソイド、免疫グロブリンなど)によって獲得することができます。

 

注4:インターフェロン(Interferon)

1957年、イギリスの研究者アイザックとスイスの研究者リンデルマンが発見した物質。細胞がウイルスに感染すると、免疫システムはある種のタンパク質を生成することで、細胞間にメッセージを伝達させ、ウイルスの複製及び増殖を阻害します。同時に周囲の正常な細胞にも同様のメッセージを発することで警戒レベルを上げ、ウイルスの侵入や増殖を防ぎます。このタンパク質をインターフェロンと呼びます。正常な組織あるいは血清からはインターフェロンは検出されませんが、ウイルスに感染し免疫システムが反応すると、自動的に生成、分泌されます。ただし生成及び分泌量の多寡は人に依ります。現在医療で用いられるインターフェロンはすべて人工的に合成されたものであり、ヒトの白血球細胞を刺激することで生産及び精製を行う方法、化学的に合成する方法、遺伝子工学の技術によって製造する方法があります。インターフェロンのなかで最も多く用いられているのはIFN-αで、ガンの免疫療法で一定の成果を挙げています。しかしこの人工のインターフェロンは多かれ少なかれ副作用が発生するので、身体が自ら生成するインターフェロンとは全くの別もので、同列に論ずることはできません。

 

訳者注1:日本の法律では霊芝は食品に分類されており、食品衛生法の範囲内での輸入及び販売が認められています。

 

参考文献:

 

  • 華視出版社編纂,李旭生校訂『科學的靈芝』1987.12

  • 劉國柱著『現代科學看靈芝』1990.8

  • 林志彬著『靈芝從神奇到科學』2018

  • 何永慶『自然療法』第120期所収「靈芝與中華自然療法醫學」P33-35

  • 何永慶『為癌細胞平反』所収「靈芝問題知多少」2008.3

  • 何永慶『第十二屆世界自然醫學大會論文集』所収「節醫減藥與大健康」2018.9.17

  • ウェキペディア:インターフェロン